置賜ワカテアーティスト:高橋誠(日本画家)

置賜ワカテアーティスト 高橋誠(日本画家)

Artist 4:高橋誠



置賜ワカテアーティスト・No.4〜日本画家 高橋誠〜


Q1:この道を目指したキッカケは何ですか?

A1:僕の場合は、日本画に出会ったのが大学に入ってからなんですが・・・、その前だと『中村岳陵展』というのが横浜であ
って、中学生の時にたまたま見たんです。当時はそれが日本画とは知らず、「水彩でも油絵でもないし、何だろうこれは…。でも、色とか凄く綺麗だな。」と感じた記憶があります。
それから高校の時に美大へ行きたいと思って受験勉強をしているうちに漠然と「日本画って良いな。」と思いはじめて、東北芸術工科大学に入って日本画を専攻しました。
キッカケというキッカケはないんですが、気付いたら日本画を続けて今に至っています。
大学の頃から、少しずつ日本画を描いて、就職するのもちょっと嫌だしななんて思ったりして(笑)、延々と続けて今に至っているんですが、「日本画家になりたい。」と思って、「日本画でやっていこう。」と思ったのは、極最近で、4〜5年前位からです。日本画自体は大学から数えて18年位やっているんですが、ここまで来たら「ずっとこれで生きていきたいな。」と思っています。






Q2:ご自分の作品の特徴や制作するうえでのこだわり・ポイントなど教えて頂けますか?

A2:僕が今、制作しているテーマが『光と影の風景画』なんですね。それを描くキッカケになったのが、大学卒業後に大学に勤め始めて3年位スランプに陥ってしまって、ずっともがいていたんです。
その頃、たまたま行ったイタリアのベネチアの水路の風景に感動したんです。強烈な光で、水なのか空なのか分からないくらい、ぱーっと光った風景に猛烈に感動して「これだ。」というのがあってスランプを脱することが出来たんです。
それがキッカケで『光』とか『影』を意識するようになって、大学の任期が終わる2003年からの1年間イタリアに留学しました。
そこで取材しながら、あの時見た風景にまた出会いたいとか、どれくらいの感動が待っているのかという期待をしながら、語学学校に通いながらスケッチをしてあちこち回りました。
イタリアで見つけた光と影の風景というのは自分にとって凄く魅力的で、帰国してからもずっと『光と影の風景画』というのをテーマにして描いています。
『光』と『影』を『白』と『黒』と言ってしまえばそれで終わりなんですが、『光の中の僅かな影』だったり、『影の中の僅かな光』だったり、そういう『光と影の中間』という世界を表現するのが非常に難しくて、「どこまで暗くしていいのか。」「どこまで明るくしていいのか。」というところを今凄くこだわっています。
前は影寄りの表現をしていたのですが、今は『光の中の僅かな影』を意識して制作しています。
『光と影の中間』を描くというのは今でも一番の課題で、『光』と『影』を『白』と『黒』で割り切れればいいんですけど、割り切れないので・・・。
日本画では、『光と影を中心とした風景画』というのは意外と誰もやっていないんですよ。ヨーロッパでも人物に光と影を構成した画はいっぱいあるんですが、風景画はないんです。
なので、博士課程に行った時、光と影の風景画の資料や研究論文を探したんですが、いくら探しても無かったんです。
でも、無いということは面白いのかなとか、誰もやっていないというのはやりがいがあると思って、光と影を使った平面構成と空間構成を融合させて描いています。
日本画は非常に面倒な絵具を使うんですが、塗った時と乾いた時の色が全然変わるんです。しかも白は、何回も塗らないと発色しないですし、下地の色に何を塗ったかで白の発色の仕方が違うので、計算して下地から積み上げていかなくてはいけないんです。
日本画の絵具は、鉱物、砂なのでどうしても下地の影響を受けてしまうんです。
あと、筆の置き方や絵具の塗り方でも、表情が変わっていくので非常に面倒なんです(笑)
でも、日本画じゃないと青や白が上手く出なかったり、他の水彩などでは絶対に出ない色なんですよ。





Q3:風景を描くのは外国が中心なんですか?

A3:そうですね。イタリアで自分が実際に出会った風景だったり、体験した風景が中心になっていて、日本の風景でも良いなと思った場所は取組んでいます。
でも、何故かイタリアの風景の方が僕には合っていて「描きたい。」という欲求が生まれるんです。イタリア以外にも色々な国に行ったんですが、どうしてもイタリアの風景が引っかかって欲求が生まれるので、自然とイタリアの風景画が多くなってしまいます。



Q4:創作活動をしていて良かった事や苦労した事はありますか?

A4:良かった事は、時々作品を見て「いいなぁ。」とか「感動しました。」という感想をもらえる時は嬉しいですけど、圧倒的に地道な作業の方が多く、一枚一枚描いていくだけの毎日なので、ずっと苦労してます(笑)
多分、どの年代の作家さんに聞いても同じようなものだと思うんですけど、みんな苦労して、描けない描けないと悩んで、それが一生続くんだろうなと思うんです。
長く続けていて良かったなと思うことが一つだけあって、昔気付けなかったことが気付けるようになったことです。昔は、同じ風景を見ても大して感じてなかったのに、今だと「こんなに良いものがある。」とか「何だ、こういうのもありえるじゃないか。」とか、今まで気付けなかったことの中から、少しでも抽出出来るというか、感じ取ることが出来るのが、やって来て良かったなと思うんです。



Q5:今後、どのような作品を制作したり、創作活動を通してどのような事を伝えていきたいかなど、ご自身の目標や展望などを教えて下さい。

A5:『光と影』をテーマにしていますが、『光と影』って普遍的なものじゃないですか。誰だって暗いのは嫌だし明るい方がいいし、『光』っていうのを意識すると、そこには夢があったり希望があったり、ポジティブな印象ですよね。『影』は、あまり暗い方に進みたくないとか、ネガティブな感じですよね。
僕は道とか描くんですけど、例えば「この先に何があるんだろう。」とか、期待感のようなものが『光』にはあるのかなと思います。
そういった作品だと、見る人が“まず路地に飛び込みたくなる”、“この先に行ってみたくなる”と思うような作品になったら嬉しいなと思っています。
僕自身も“この先に進みたくなる”という気持ちで描いています。画を見ている人と僕自身がシンクロするように自己投影しながら描いているんです。
大それたことをしようとは思わないですが、僕が感じていいなと思った感覚が見る人の感覚と時々すれ違って、触れ合えれば嬉しいなと思っています。
日本の光とイタリアの光では質が違って強烈なんですが、決して嫌みじゃないんです。
強いんですけど優しい感じの光で、特に向こうの景色は500年とか600年とか、ずっと現地の人に守られている街なので、時間が経つごとに凄く味わい深くなったりして、僕にとって癒される空間なんです。そこに光がパッと入ると、たまらなく魅力的なんです。
日本では中々探せないので(笑)何気ない風景がそういう魅力を持っているって凄く良いなと思います。
なので今は、『希望』であるとか『夢』であるとか良い印象で描きたいと思っているし、画を通して画面の遙か上から降り注いでいる太陽を感じてもらえれば嬉しいかなと思います。
僕にとって『光』は、『希望の光』というか、描けないブランクからの『救いの光』だったので。







          



 高橋誠 −略歴 −
 1974年−山形県米沢市生まれ
 1993年−東北芸術工科大学 芸術学部 美術科日本画コース入学
 1998年−今野忠一に師事
 1999年−東北芸術工科大学 大学院修士課程修了
 2003年−イタリア留学(シエナ外国人大学など)
 2006年−財団法人佐藤美術館 第16期奨学生
 2009年−東北芸術工科大学 大学院博士後期課程 芸術工学専攻修了
 現  在−日本美術院 院友



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