アートなプチ旅(涜市・川西町編





 置賜の各地域を歩いていると、街中の公園や道路、橋などに何気なくつくられているブロンズ像やオブジェが、実は地元ゆかりの作家などによる貴重な作品だった(!)ということが少なくありません。
 思わず足を止めて見入ってしまうような名作もあれば、「おや、これは何だろう?」と考えさせられる作品もあります。
 美術館を利用するのはちょっと敷居が高いという人にお薦め。散歩をしながら気軽に見ることができる隠れた「展示室」を探し、アートな置賜を身近に感じてみませんか。



 アートなプチ旅の第1回目は米沢市・川西町編。次の作品をご紹介します。

 。複卻涜駅前のモニュメント 〜 ⊇伺傾抄兇離屮蹈鵐坐 〜
 J涜総合公園のモニュメント 〜 と幡原緑地公園のモニュメント 〜
 ィ複岨碍舛きたま川西東部ライスステーションの壁画 〜
 川西町フレンドリープラザ内の壁画 〜 Г舛腓辰抜鵑蠧擦肋綽神社周辺



1 活力と創造と愛の21世紀都市・米沢をめざして 〜JR米沢駅前のモニュメント〜


観光客をもてなしているJR米沢駅前のモニュメント
「活力と創造と愛の21世紀都市・米沢をめざして」
 米沢市の玄関口・JR米沢駅。駅舎を出るとすぐに目に飛び込んでくるモニュメントがあります。タイトルは「活力と創造と愛の21世紀都市・米沢をめざして」。
 米沢市都市計画課によると、1992(平成4)年の駅舎改修に合わせ、駅前広場の整備として設置されたもの、とのことです。モニュメントの高さは約6mにもなります。
 振り返ってみると、この年は山形新幹線が開業した年であり、また県内各地で人々の交流と熱い競技が繰り広げられたべにばな国体が開催された年でした。
 銘板によると、空に向かって伸びていくアーチは、米沢織物の柔らかさと笹野一刀彫として全国的に有名な民芸品のお鷹ぽっぽを表現しているそうです。確かに横から見るアーチ部分のしなやかなシルエットはお鷹ぽっぽの尾の部分に見えます。
 アーチの上や側面には子どもや鳥、犬、猫などの像21体が生き生きと表現されています。この21体の像は、21世紀を意味しているのだそうです。
 21世紀を迎えた現在、米沢市はモニュメントが掲げた理想を体現する都市に近づいてきているでしょうか。住みよい米沢の原点に立ち返るきっかけにしたいですね。



2 5月の女 〜住之江橋のブロンズ像〜


米沢市出身の彫刻家・桜井祐一氏
の作品「5月の女」

 JR米沢駅から市街地の西方向へとのびる主要地方道米沢停車場線を進んでいくと見えてくる住之江橋。橋の欄干にはなぜかふくよかな裸婦のブロンズ像が立っています。
 これは、米沢市出身の彫刻家・桜井祐一氏(1914〜1981年)の晩年の作品で、「5月の女(1981年)」「腰かけた裸婦(1978年)」「もの想うひと(1972年)」「若い女(1969年)」の4体です。
 米沢市都市計画課によると、1995(平成7)年、旧住之江橋の老朽化に伴う架け替え工事の際、「米沢市美しいまちづくり計画」の一環として設置したものだそうです。西吾妻山や川沿いの桜並木など四季折々の風景と一緒に、ブロンズ像を楽しむのもいいかもしれません。
 桜井氏は文化勲章受章作家の平櫛田中(ひらぐしでんちゅう)氏に師事。20歳の時に第21回院展初入選を果たし、1951(昭和26)年には院展大観(たいかん)賞を受賞、米沢市の功績章などを受章しています。
 桜井氏の作品は、住之江橋のほかにも、米沢市民ギャラリー(ショッピングビルポポロ米沢館4階)=米沢市中央=や置賜広域文化施設の伝国の杜=米沢市丸の内=の館内などでも鑑賞することができます。





 3 光と水の神殿 〜米沢総合公園のモニュメント〜


日時計型モニュメント
「光と水の神殿」

 鉄塔のようなものがそびえ立ち、一見するとこれは何なのだろうと思いますが、近づいてみると、周囲にはローマ数字が配列され、日時計型のモニュメントだとわかります。上空から望むと、実は振り子時計の形をしているのだそうです。
 銘板の文字は薄くなっていますが、「水の舞台を中心に構成された日時計型であり、広場と一体となった文化性の高い彫刻空間」であると紹介しています。
 高さ約15mの日時計の針の部分の周囲には、池のように水が張られており、光と水のコントラストを楽しむことができそうです。もちろん、日時計としての機能は今も健在です。
 この一帯は、プールや野球場、弓道場などを兼ね備えた総合公園になっています。モニュメント北側にあるピクニックの丘は、山形県の輪郭を模した園路で囲まれています。最上川をイメージした水路や西吾妻山などを示す銘石があり、山形県の特徴を存分に取り入れた丘になっています。
 米沢市内には山形県の形をした丘がこのほかにもあります。それは米沢市西部地区の「す○や○広場」です。ヒントになりましたか? 時間に余裕がある方は探してみてください。



4 SORRISO(ソッリーゾ) 〜八幡原緑地公園のモニュメント〜


メタリック調の巨大な唇
「SORRISO(ソッリーゾ)」

 置賜地域で開発中の先端技術である有機エレクトロニクスの関連施設をはじめ、様々な工場が建ち並ぶ八幡原(はちまんぱら)中核工業団地の一画にある八幡原緑地公園=米沢市八幡原5丁目=の広場で、ひときわ異彩を放つこのモニュメント。これは……、くちびる?
  メタリック調の巨大唇は、知らない人が見ると一瞬目を奪われてしまうことでしょう。背景の木々のどこかに目や鼻に見える場所がないか探してみたくなります。
 幅13m、高さ2.3mの巨大な唇は、地域振興整備公団(現(独)中小企業基盤整備機構)が1995(平成7)年に総工費約3,000万円をかけて設置したもので、その後、米沢市へ寄贈され今日に至っています。
 作品名のソッリーゾとは、イタリア語で「微笑み」という意味で、地元のみなさんはこの公園を親しみを込めて「くちびる公園」と呼んでいるようです。
 夏場には軽スポーツの会場として利用している人たちもおり、文字通り微笑みが集う憩いの場となっています。
 当時の東北芸術工科大学の五十嵐治也デザイン工学部長らがデザインし、作品に据えられたプレートには「自然と人の和するところ、八幡原。ここに永遠の発展への祈りを込めほほえみをおくる」と刻まれています。



5 食 〜JA山形おきたま川西東部ライスステーションの壁画〜


川西東部ライスステーションの壁画「食」
 川西町吉田地区を通る主要地方道米沢南陽白鷹線を走っていると、突如現れる巨大な壁画。コレハナンダ??  これは、JA山形おきたま川西東部ライスステーション=川西町吉田=のサイロ施設で、1人の東北芸術工科大学生が3ヶ月にわたって描いた大作です。芸術家を目指す学生の若い感性が、道を行く通行者の視線を集めています。
 同施設の新設稼動に合わせて、地元の団体が空白の壁面を彩ることができないかと、1998(平成10)年ごろ同大学に相談したそうです。北側と西側の壁面いっぱいに描かれた作品のテーマは「食」で、関係者は「見た人それぞれのイメージで作品を楽しんでほしい」と話しています。田んぼの稲が実る頃、金色のじゅうたんに浮かぶ大作を楽しんでみてください。



6 町なみの風景 〜川西町フレンドリープラザ内の壁画〜


1990年代の川西町が描かれた「町なみの風景」
 劇作家の井上ひさし氏(1934〜2010年)を生んだ川西町の文化の中心施設フレンドリープラザ=川西町上小松=。その中にある図書館のカウンター隣の壁には、川西町出身の画家・黒澤梧郎(くろさわごろう)氏(1918〜1999年)の油彩画「町なみの風景」が展示されています。
 黒澤氏は、1991(平成3)年に日本文化振興会から国際芸術文化賞を受けています。この壁画のほかにも、川西町立川西中学校や県立米沢興譲館高校のコモンホールの壁画を手がけています。
 この作品は、フレンドリープラザから見た1990年代の羽前小松駅周辺の風景を描いたものです。現在は住宅が立ち並び、当時の雰囲気と変わりつつあります。作品の町並みと現在の町並みを見比べてみると面白いかもしれません。
 同所ロビーにある「古墳のある町のファンタジー」も黒澤氏の作品で、「町なみの風景」とあわせて2部連作であると説明板に記されています。ぜひ2作品をいっしょに見てください。



7 ちょっと寄り道。 〜上杉神社周辺〜

大勢の観光客に親しまれている
上杉謙信公像


 ここで、ちょっと寄り道して、米沢市の上杉神社周辺をご紹介します。この界隈は、文化ホールや博物館、伯爵邸、児童会館などが密集する、置賜地域最大、県内でも屈指の文化エリアゾーンで、常に観光客や文化人などでにぎわいを見せています。
 この周辺にある像で有名なのは、やはり上杉鷹山公ではないでしょうか。座像、立像、胸像、レリーフと4種類があります。
 皆さんはこれらの鷹山公の像4体すべてを見たことがありますか? 見比べてみるのも楽しいですよ。どこにあるかは自分自身の足で探し歩いてみてください。
 また、上杉神社境内には上杉謙信公像もあります。米沢市都市計画課によると、米沢ライオンズクラブが創立10周年を記念し、1974(昭和49)年に設置したそうです。像には高畠町出身の「彫刻家・鈴木実 作」との記載があります。鈴木実氏についてはアートなプチ旅第2回の高畠町文化ホールまほらのブロンズ像をご参照ください。
 観光客を見守る謙信公の姿は、なんとも威風堂々としています。訪れた観光客の多くはここで記念撮影をしています。謙信公は米沢市内で1、2を争う人気モデルかもしれないですね。


《アートなプチ旅 その2につづく》







○掲載日  平成22年11月

○執筆者  大竹 茂美(置賜文化フォーラム事務局)



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