3 置賜のぶどう農家の今 置賜地域で盛んなぶどう栽培。しかし、現在は栽培農家の減少、後継者不足に悩まされている面もあります。そんな中、次世代を担うやる気のある人たちがぶどう栽培に取り組んでいます。その姿を紹介したいと思います。 南陽市川樋地区、国道13号沿いやその周辺の山の斜面などには、ぶどう栽培でよく見られるアーチ型のビニールハウスが広がっています。そこでぶどう栽培に取り組む佐竹祐宏(さたけゆうこう)さんにうかがいました。
佐竹さんは現在37歳。農家を始めて今年でちょうど10年になるそうです。それまでは、一般の会社員だったそうです。ぶどう栽培をしていた父親が他界したことを契機に、右も左もわからないままこの世界に足を踏み入れることになりました。 ゼロからのスタートを切った佐竹さん。最初の一年は苦労の連続だったそうです。疲れからかプレッシャーからか、体重も減少……。農業機械の使い方もよくわからなかったといいます。そんな彼を助けてくれたのは、周囲の農家の人たちと、亡くなった父の友人達でした。そのときの助けに本当に感謝していると話す佐竹さんです。 現在、佐竹さんの園地では、デラウェアはもちろん、ロザリオビアンコなどの大粒のぶどうも栽培しているそうです。 栽培するときに特に気をつけていることは、ぶどうの成形の作業だそうです。大粒ぶどうは、まだぶどうの粒が小さいうちに形を整え、余分な栄養を使わないように余分な粒をあらかじめとってしまわなければなりません。この作業を粒抜きといい、1〜2ヶ月後の収穫時期のぶどうの形をイメージしてぶどうの粒数を調整していきます。 芸術家のような繊細な心配りがいるのではないかと思われますが、佐竹さんのその作業はまわりの人が驚くほどに大胆! でも、それは頭の中でイメージできている形なので、ぶどうはきれいにできあがるといいます。 毎年必ず行う作業ですが、その年の気候などによって状況は微妙に変化しています。佐竹さんは「今年の出来を来年に活かすこと、そして決してゴールがないことがぶどう栽培の面白いところ。毎年が勉強で、失敗と成功の繰り返し。それを活かしてもっと良いぶどうを作りたい」と意気込んでいました。
佐竹さんのデラウェアは平成19年度のJA全農山形主催の品評会で優賞を受賞しました。栽培経験の少ない農家が受賞するのは大変めずらしいことなのだそうです。そのほか、大粒種の品評会でもロザリオビアンコでの受賞もあったといいます。 「賞をもらうのはほんとにうれしい。だけど、食べてもらっておいしいって言ってもらえることが何よりうれしいことなんだ。」と笑顔で話す佐竹さんでした。 これからの目標は、育てているぶどうすべてを、見た目も味もおいしいぶどうに育てること、とのこと。佐竹さん、これからもベストな品質、おいしいぶどうを作っていってください! 4 置賜特産のぶどう
〇なんといっても「デラウェア」です 置賜地域はデラウェアの生産量が日本一です。 デラウェアなどのぶどうが山形県で栽培されるようになったのは、置賜地域が最初です。そこから徐々に広まっていき、山形県全域で生産されるようになりました。 デラウェアはお盆の時期などには地元の食卓をにぎわすことも多く、大衆的に食べられるぶどうとして人気です。 色は濃い紫色。種がなく小粒で食べやすいです。小さな子どもにも安心して食べさせることができますね。ワインにもデラウェア100パーセントのものがあるとのこと。食べてもよし、飲んでもよし。
〇期待のシャインマスカット 置賜全域で今、最も注目されているのは、新品種のシャインマスカットです。白色のぶどうで、甘くておいしいです! 種のない品種で皮ごと食べられるという長所があり、消費者の人気が集まりそうだと期待されています。この品種は平成18年に新たに品種登録されたばかりなので、現在はまだなかなか手に入らないかもしれません。 テレビ、新聞でも話題となり、一躍有名になりました。置賜地域では平成23年から本格出荷が始まります。新品種の活躍に期待です!
〇根強い人気、高尾 「ぶどうの中で一番おいしい」と、好評です。黒色のぶどうで、種もありません。実の形が少しひょろ長いところが特徴です。甘さが強く酸味が少ないのが人気のポイントです。生産が難しいために栽培量が少なくなってきていることから、幻の品種といわれています。 高尾好きの方は、冬場コタツで食べるデザートとして、冷凍してシャーベットのようにするという食べ方も! 〜贈り物にぶどうはいかが?〜 大粒の高級ぶどうは贈答品としても喜ばれます。食べ応え満点の大粒種。一種類のぶどうだけでも満足ですが、見た目でも楽しみたいですよね。ぶどうの色は大まかに赤、黒、白の三種類の色に分けられます。 三種類そろうと、見る楽しみ、食べる楽しみが三重になります。もらえるとうれしいギフトだと思います。たとえば、黒で「巨峰」、「高尾」や「ピオーネ」、赤で「安芸クイーン」など、白は「ロザリオビアンコ」、今後は「シャインマスカット」がはいっていれば、話題ということもあってとても喜ばれるのではないかと思います。 ○掲載日 平成22年12月 ○執筆者 鈴木真紀(置賜文化フォーラム事務局) ○取材協力 大浦理亮さん(高畠町和田 ぶどう農家) 佐竹祐宏さん(南陽市川樋 ぶどう農家) 冨樫幸彦さん(JA山形おきたま 生産販売部園芸課 課長) 印刷用PDFはこちら |
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