置賜地域は母なる川・最上川をはじめ、白川や野川、荒川などの豊かな水源に恵まれ、基幹作物である米を中心に、地域の特性を活かしながら果樹を中心とした園芸作物、さらには酪農と米沢牛を主にした畜産の三つの柱のもとに農業の振興が図られてきました。 米では、2万haを超える肥沃な水田を有し、はえぬきやコシヒカリ、新品種のつや姫の良質米の産地として安全・安心を求める消費者ニーズに対応した特別栽培米や有機栽培に積極的に取り組まれています。 果樹では、高畠町、南陽市を中心にぶどうの生産量が多く、デラウェアは日本一の産地となっており、近年はシャインマスカットなど大粒ぶどうの導入も進められています。また、さくらんぼが南陽市、米沢市、高畠町を中心に生産され、西洋なしやりんごについても高畠町、南陽市、米沢市、白鷹町を中心に生産されています。 野菜では、転作田を活用して白鷹町、川西町を中心にえだまめの作付けが進んでおり、また、飯豊町や川西町を中心にアスパラガスの産地づくりが行われています。一方で、地域の特色ある伝統野菜の生産振興に関する取り組みも進められています。 花きでは、米沢市、南陽市、川西町を中心にアルストロメリアの産地が形成され、また、川西町を中心に古くから愛好家によって栽培されてきたダリアの切り花出荷が行われており、長井市、飯豊町、白鷹町、高畠町を中心に生産される鉢物・花壇苗・啓翁桜等と併せ、多彩な花の産地として全国的に注目されています。 酪農は飼養頭数では県内の過半を占めている有数の産地であり、肉用牛は全国ブランドである「米沢牛」として、おいしさと肉質の高さから高い評価を得ています。 ■ 置賜の米■ 置賜地域は最上川の上流部に位置し、飯豊・吾妻連峰など豊富な水源となる山々に囲まれています。また、夏は暑く、気温の日格差が大きい典型的な盆地型気候で地力にも恵まれ、「米どころ山形」の中でも特に米作りの盛んな地域です。
戦後〜昭和40年代にかけては、米の増産は農業の中心的課題であり、米をいかに多くとるかという「多収穫」の競争や研究が盛んに行われた時代でした。 このような中、従来の栽培のはじめの段階でたくさんの肥料を使う基肥主義に対して、置賜地域では生育の後半にかけて肥料を与える追肥に重点を置いた栽培法が優れた農家の間であみだされ、県内ではもちろん全国でもトップの収穫を上げる米の篤農家を続々と輩出することとなりました。 これは気象を含め地域の条件と稲の生育に対するたゆまぬ観察や栽培の試行錯誤を重ねた結果でもあり、全国各地からその栽培方法を習おうと視察者が絶えなかったそうです。 このように、稲作にかける情熱がひときわ高い置賜地域では、昭和50年代に入り一転してコメ余りの時代を向かえ、「たくさんとれる米」から「おいしい米」の生産へと時代がかわっていきます。 そんな中、山形県では栽培が難しいとされた食味のすぐれた「コシヒカリ」を県内でいち早く導入し、安定した栽培法を確立して品質・食味とも高く評価されるコシヒカリの産地として認められるまでにいたっています。 このような取り組みが近年、全国的に行われているおいしい米の「食味コンクール」でも置賜地域の多くの生産者が最優秀の表彰を受ける要因ともなっているのです。 また置賜地域は、環境にやさしい安全安心な農業への関心が高まる中、「有機栽培」などの先進地ともなっており、消費者の要望に応えられる多様なお米の産地づくりが進められています。 ■置賜地域の伝統野菜■
伝統野菜(在来野菜)とは、特定の地域で世代を超えて、栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定な用途に供されてきた作物のことです。 置賜地方は、上杉家米沢藩時代に由来する洗練された魅力的な伝統野菜と食文化が数多く存在します。上杉藩の智将直江兼続公が越後から持ち込み、「なせばなる」の格言で有名な第9代米沢藩主上杉鷹山公が奨励したと伝えられています。 【置賜地域の伝統野菜の数】 置賜地域では現在約25種類の伝統野菜が確認されています。山形県置賜総合支庁では、地域の伝統野菜等の生産振興とともに食文化の継承や観光等の振興を図ることを目的に、その中から11品目を「山形おきたま伝統野菜」として認定しています。 【山形おきたま伝統野菜】 雪菜、うこぎ、小野川豆もやし、おかひじき、薄皮丸なす、花作大根、紅大豆、わらび、高豆くうり、ぜんまい、あざみ 【山形おきたま伝統野菜:薄皮丸なすのご紹介】 薄皮丸なすは、自家用野菜として古くから置賜地域全域で栽培され、果実は丸く一口大で収穫されます。出荷時期は7〜9月です。 置賜地域の夏の食卓を代表する薄皮丸なすの浅漬けのレシピをご紹介します。パリッとした歯ざわりを是非お楽しみ下さい。
超簡単! 薄皮丸なすのビン漬け 材料 ・薄皮丸なす 250〜300g ・漬け液 200cc程度 ※450ccの広口ビンを用意する 作り方 1.ビンにへたをとった薄皮丸なすをびっしり詰め、冷やした漬け液を口元で注ぐ。ふたを閉めて常温に置く。 2.漬けあがりは7〜8時間後なので色がついたら冷蔵庫で保管する。 (開封のとき、液がこぼれることがあるので注意する) ☆漬け液の作り方 材料 ・水 900cc ・塩 75g ・砂糖 100g ・みょうばん 大さじ1 作り方 材料を全部合わせて、火にかけ沸騰したら火を止め、冷ます。 参考文献:どこかの畑の片すみで(山形県在来作物研究会) ■置賜の中の米沢牛■ 【米沢牛とは】 米沢牛の評価は、全国で総合第2位! 平成21年4月に日経リサーチが実施した「国産ブランド牛肉に関するバイヤー調査」の結果です。 山形県は全国で最も多くの特選和牛(雌)を生産している県であるということを皆さんはご存じでしょうか。和牛枝肉の格付け項目の中にBMS(脂肪交雑基準値)というものがあり、霜降りの入り具合で1から12までの数値で評価されます。このうち10以上に格付けされた肉がいわゆる特選和牛と言われるのですが、平成21年度に全国から出荷された特選和牛(雌)の総頭数の14%が山形県産。全国で流通している特選和牛の実に7頭に1頭は「山形県産」ということになります。 (雌牛は一般的に筋繊維が細かくおいしいといわれており、米沢牛の8割以上は雌となっています。)
米沢牛は、米沢牛銘柄推進協議会(会長:米沢市長)で認定された置賜3市5町の生産者が生後32ヶ月以上飼育し、(社)日本食肉格付協会で定める3等級以上に格付けされ、外観並びに肉質及び脂質が優れている枝肉であると定義されています。 米沢牛の歴史は、米沢の地に赴任していた英国人洋学教師チャールズ・ヘンリー・ダラスが、任期を終え明治8年、横浜の居留地に戻る際に米沢の和牛を持ち帰り仲間に食べさせたところ、その美味しさに驚き大好評を得た話から始まります。明治初期の牛は食肉用に育てられたものではなく、役畜用として家族同様に大切に扱われていました。 【米沢牛はどんなふうに育っているのか】 米沢牛は、平成22年2月現在、約170戸の飼育農家で、約6,400頭が肥育されています。1戸あたりの飼養頭数では約40頭となっており、県平均では1戸あたり約70頭飼養されていることからみるとけっして大きな規模でないことがわかります。もともと稲作との複合経営が主で、稲刈り後の稲わらは牛の貴重な餌として給与し、牛が出すふん尿はこれはまた貴重な有機質資材として堆肥化し水田に還元するという、昔ながらの循環型農業の基本がそこにはあります。家族経営として1頭1頭丹精込めて仕上げたいという生産者にとってちょうどよい飼育頭数になっているのです。 いい米沢牛が育つためには、牛の血統が5割、餌が3割、管理が2割といわれています。牛1頭には10アール分の稲わらが必要で、他に大麦、大豆、トウモロコシ、フスマなど国産の質の良いものを求め、飼育している牛1頭1頭の健康状態をみながら独自の配合をして食べさせます。 厳しい気候風土の中で、高い肥育技術に基づく米沢牛肥育の匠が、歴史と伝統を活かし愛情を注ぎながら、ほかの産地にないほどの長期肥育(32ヶ月)でじっくりと育て仕上げている、それが米沢牛なのです。 【おいしさの秘密】
牛肉のうまさは含有する不飽和脂肪酸(オレイン酸等)の割合が鍵となっていると言われています。一般的に不飽和脂肪酸含有率が高いと融点(溶ける温度)が低くなり、それを口にした場合、人間の体温よりも融点が低いことから口溶けが良く、食べ続けても口飽きしないということになります。 和牛は食文化です。おいしい和牛肉は、食生活の中で人々を幸せにしてくれるものです。 山形県農業総合研究センター畜産試験場では、全国に先駆けて牛肉のおいしさに係る研究を進めており、米沢牛銘柄推進協議会としても県畜産試験場の協力のもと関係機関一体となって、出荷枝肉の脂肪融点やオレイン酸含有量を測定・分析して、米沢牛のおいしさを科学するとともに、生産頭数の拡大を図り、消費者の皆さんにおいしい米沢牛として提供できるよう日々検討を重ねています。 ○掲載日 平成23年 3月 ○執筆者 木村新一(山形県置賜総合支庁 農業振興課地域農政担当) 梅津和夫(山形県置賜総合支庁 農業技術普及課) 奥山寛子(山形県置賜総合支庁 農業振興課園芸振興担当) 上野宏樹(山形県置賜総合支庁 農業振興課畜産担当) ○写真提供 山形県置賜総合支庁 農業振興課 山形県置賜総合支庁 農業技術普及課 米沢牛銘柄推進協議会 ○関連ページ 置賜総合支庁 おきたまの伝統野菜 米沢牛銘柄推進協議会 印刷用PDFはこちら |
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