レインボープラン…「循環型社会」への挑戦



レインボープランの概略

 長井市民が取り組んでいる『レインボープラン』をご存知でしょうか。正式名称は『台所と農業をつなぐながい計画』です。

 このシステム誕生の発端は、97名の市民が参加した昭和63年の「まちづくりデザイン会議」の議論に遡ります。農民から出された「土が弱っている」という意見がきっかけとなり、有機堆肥を田畑に投入する環境保全型農業をすすめることが必要であることを再認識し、その堆肥の原料となる有機質資源の供給源を市民の台所から排出される「生ゴミ」に求めたのがはじまりです。

 市民から提案されたこの考え方は、行政側のサポートを得て民官あげての8年余りの協議・モデル事業の実施・検証を経て、平成9年から本格稼動となりました。
 当時は、マスコミからは壮大な社会実験として取り上げられ、山形県からは「協働のまちづくり」のモデルとして位置付けられました。農家と消費者と行政がともに「循環型地域社会づくり」に取り組んできたのです。


集められた生ゴミを熟成させる
 レインボープランのシステムが稼動して13年が経過しましたが、今では中心市街地の約5,000世帯の生ゴミほぼ全量が堆肥に変わり、これまで可燃ゴミとして焼却処分されていた生ゴミが、有機質資源として生まれ変わっています。

 レインボープランは生ゴミ処理事業を目的としたものではありませんが、結果として、システム稼動後の可燃ごみが30%削減しました。収集された生ゴミに畜糞と籾殻が加えられ、80日間の醗酵・熟成を経て年間400tほどの堆肥が生産されます。

 そして、レインボープランがほかの地域の生ゴミリサイクルシステムとの違いの一つとして高く評価されているのは、この堆肥が全量市内の田畑に戻され、そこで生産された作物を再び市民の台所に提供するという地域内完結型の循環システムになっていることです。



目指す地域のかたち

 これまでの社会は、常に何かを追い越して成功を得るという競争原理が働いてきました。自然の営みのサイクルをも追い越し、効率性のみを追求してきた社会だったとも言えます。

視察者にも人気のレインボー野菜

 しかし結果として得たものの多くは、利己主義と焦燥感。そして、いつまでも付きまとう未来への不安感でした。農家の不安は、充足されない経済と「土の疲弊」に到達し、消費者には健康と安全な食べ物への不安が募っています。

 レインボープランは理念の一つに「土はいのちのみなもと」という言葉を掲げていますが、これは、健康な土から得られる作物によって健康な身体が作られるということを意味しています。消費者である市民が「土」の健康づくりに参加して、生産者は消費者(市民)の健康な身体づくりに貢献するというレインボープランの姿は、単なる資源の循環システムを越え、同じ地域に暮らす消費者と生産者のゆるぎない繋がりをもとにした「命つなげる地域」を目指す故郷づくりでもあるのです。


求められる循環型社会

若い世代の環境教育の場にもなっている


 四季の移り変わりには「廻り来る約束」がありますし、経済も自国や個人のもとへお金が「廻って来る約束」があれば「安心」を得ることが出来ます。地域で暮らし続ける人々の「安心」は地域内の資源と人々の優しさが廻る「約束」があって成るものでしょう。

 そして、その「約束」の履行には「利・益」が一方に滞留しない「廻り」が必要です。つまり「安心」を得る「約束」は「循環」の仕組みにあるとも言えるのです。私たちが求める幸せな社会とは、物質・精神の両面にわたる廻りが約束された「循環型社会」と言ってもよいでしょう。

 「循環」・「ともに」・「土はいのちのみなもと」の理念を携えて、レインボープランの未来への挑戦はまだまだ続きます。



○掲載日   平成23年 3月

○執筆者   江口忠博さん (前・長井市レインボープラン推進協議会会長)

○関連ページ レインボープラン推進協議会



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