吾妻の白猿



1 白猿について

動物園へ行った白猿

 昭和13年(1938年)3月米沢市南原の藤田三郎氏と、関町の小林安寿氏の二人のハンターが、10才ぐらいの白いメス猿を福島県と山形県にまたがる西吾妻の山中で発見・捕獲しました。一週間ほど南原で飼育した後、東京の上野動物園に引き取られていきました。
 作家の戸川幸夫氏の名作「吾妻の白猿神」のモデルにもなりましたが、環境に順応できなかったせいか一年ほどで亡くなったそうです。

習性、生態



 白猿は毛が白いのはもちろん、顔、手、足と肌の見える所はピンク色で目はブルーです。白猿の寿命は普通の猿に比べて短いような気がします。ただ、昭和54年に生まれた白猿よっちゃん(メス)だけは16年も生きて5頭の子猿を産んでいます。
 猿の年齢は人間の4倍と言われています。(よっちゃんの場合、人間で言うと66才まで生息。)また、猿の場合死亡するまで妊娠可能と言われています。猿の出産は2年ごとで、出産時期も、4月〜6月ぐらいまでです。たまに双子を産むこともあります。
 10月〜12月の交尾期以外、オス猿とメス猿は別行動をとっており、通常群れ(一群れ30頭〜120頭)として見かけるのは、メス猿の集団です。(1本当のボス猿はメス猿で、群れの中にいるオスのボス猿(尾っぽをピンと上げているのですぐ分かります。)は一時任されているだけで、餌場の確認や群れの秩序維持ができなくなると交代させられます。だから必死になり群れを引っ張っているのです。次の餌場に行く為には、場所を確認してから移動する為、1〜2日前に偵察役の猿を出しています。
 あの広い山の中で何処の栗の実が食べごろか等、殆ど分かっているようで、毎年同じところに同じ時期に現れるようです。

生息している場所(範囲)

 白猿は大きな猿の群れの中で一緒に行動しており、米沢市内で確認されている9群れ(関根・南原・大平・白布・天元台・綱木・簗沢・小野川・大峠)の中に、1〜2頭ずつ入っています。群れには行動範囲があり、通常それ以外には行かないのですが、たまに群れと群れが重なる場所も有るようです。

初めて白猿に巡り合う

 私が初めて白猿に出会ったのは昭和54年3月始め頃、今の綱木川ダムが出来る前の鳥川地内でした。日曜日の晴れた日、雪景色の撮影に出かけたところ、田んぼの雪原を移動している2匹の大きな猿(ふうこ・みっちゃん)に遭遇したのです。大変感激したことを覚えています。その姿の虜になり白猿を追いかけ始めました。

白猿の名前の由来

 これまで確認された白猿は23頭ですが、昭和13年に上野動物園に行った白猿には名前がなく、昭和50年以降発見された白猿に名前が付けられるようになりました。


 はつこからよっちゃんまでは、遠藤亭先生が名付けた名前です。ふくちゃんからはくてんまでは、白猿会で付けた名前です。チッチ・まゆ・のぞみの3頭は、市民からの公募で付けました。
 名前の由来として、最初の4頭は、ひい・ふう・みい・よ。次のふくちゃん・すけちゃんは、福助床屋さんの名前からとり、次のむつちゃんは6番目に生まれたからです。あいちゃん・たかちゃん・なおちゃんは上杉家の武将にちなんで名付けられ、ホクロちゃんは顔と肩に3つのホクロがあったためです。
 また、れいちゃんは山の峰で発見されたことからで、まいちゃんは、そのれいちゃんと姉妹だからです。さとみちゃんは里でも見られることから名付けられ、かぶとちゃんは兜山のふもとで、いくちゃんは平成19年に発見されたためです。あきらちゃんは発見者の名前で、はくてんは白布と天元台から名付けました。


2 白猿会について

会発足の経緯

 平成3年10月に設立されました。同年7月に新たに生まれた白い子猿が発見され、毎朝スカイバレーに上がって白猿を観察していた仲間で情報交換する目的で作った会です。

活動内容

 白猿は昭和58年に米沢市の天然記念物に指定されているため、行動範囲、生息頭数等の現状報告について、写真や動画に記録して米沢市の教育委員会文化課に報告しています。

白猿観察活動の展望

 長年の活動により、猿の行動範囲、群れの行動範囲が分かってきたので観察がしやすくなりましたが、なにせ野生の猿達なので裏をかかれることばかりです。それでも白猿の群れに会えた時の感動は変わりません。

活動を通して気づいたこと

 観察活動を始めたころは、猿による農作物の被害はほとんどなかったのですが、最近6〜7年前ころから人里近くまで下りて来て悪さをする様になりました。
 農家の方達は、大変困っており、電気柵や花火等で追い払っていましたが、あまり効果がない状態のようです。最近では犬(モンキードック)を使っての追い出しが行われるようになり、これが最も効果的な方法のようです。昔は、犬が放し飼いだったことを思い出してみて下さい。猿に対してここは怖い所、危険な所と学習させることができれば、効き目が大きいと思います。

白猿を見つけた時の対処法、観察する時の注意点

 白猿達の群れが人里近くまで下がって来ているので、一般の方達にも会える機会が多くなってきています。もし巡り合えた時は、大声を出したり、物を投げたり、特に餌等は絶対に投げないで静かに見守って下さい。
 面白い行動をしてくれますよ。

     


       


○掲載日 平成23年9月

○執筆者・写真提供 縮文夫(白猿会会長)

○参考文献・資料


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