1 過去から未来へ
米沢市小野川温泉は、水がきれいな川が残っていて、初夏にはホタルが飛交う自然豊かな場所で、ホタルの里として親しまれています。1200年前に小野小町が父を探し京都から東北に向かった途中で病に倒れ、この地の温泉につかって病を癒したという伝説があり、「小野小町の湯」と呼ばれています。また、伊達政宗や上杉鷹山がこよなく愛した温泉であるとも伝えられています。泉質は、含硫黄ナトリウムカルシウム塩化物温泉で、pH値が6.7〜7.4、ラジウムを多く含んでおり、80.3度の高温泉井戸でつくった温泉卵は有名
この小野川温泉には14軒の旅館があり、バブル期には年間25万人がここを訪れて活気ある温泉町だったので
小野川温泉に活気を取り戻し、地域活性化を図りたいという思いは、この町のだれもが持っています。ここ小野川では、旅館の若旦那衆や、商店の若い力が結集して、「小野川を舞台にしたSF映画を作ろう!」というまちづくりの渦がおこっています。その渦の中心人物の一人である奥山琢さん(小野川温泉「高砂屋」専務取締役)にお話をお伺いしました。 2 人のつながり のどかな温泉町のまちづくりが、なぜSF映画なのか?ホタルの里であるのどかな温泉町のイメージとSF映画のイメージはどうしても違和感があります。たどってみると、そこには感動的な人の輪がありました。
2009年夏、小森氏とのつながりで、小野川温泉を訪れていた映画祭プロデュ−サ−から、「小野川で一緒に映画をつくらないか」と声をかけて頂いたことがきっかけとなったそうです。小野川温泉を訪れる観光客が減少している中、この町に活気を取り戻したいという思いは、ここのだれもが持っていて、映画づくりが地域の活性化につながるのではないかと、小野川温泉観光協議会のメンバーが集まり協議をしたのです。観光協議会には、奥山さんをはじめ若手を中心とした小野川温泉観光知委員会という内部組織があり、祭りイベントなど実質的な実行部隊として動いています。協議した結果、映画づくりはいつも実行部隊として動いている若いメンバーに託し、年配組は精一杯後方支援するという話となったそうです。小野川温泉の若者達は、最初はあまりにも大きな話で想像すら出来なかったものの、まちづくりとしての映画製作に地域の活性化を懸け、「是非チャレンジしたい」と熱い気持ちになったのです。そして、紹介を受けたのが山口ヒロキ監督です。
山口監督が初めて小野川の町を訪れたのは、2010年3月17日でした。旅館や共同浴場、露天風呂、工場跡地、巨大倉庫など、
3 進まない日々 小野川・ザ・フィルムズ・コミューンと、山口監督との出会いが、最初に目指したのは、ブラック・インディ映画祭参加作品としての製作でした。2010年4月から、ブラック・インディ映画祭(東京)と山口監督、米沢・小野川地域が一緒になり活動を開始したのです。
山口監督の映画へのこだわりは非常に強く、最高の作品を創ることが自分の使命であり、それが地域活性化にも繋がると、作品に対し一切妥協はしないという思いです。一方、小野川側としては、多くの人の参加協力があり進めていることから、当初の予定を変えないで、スケジュール通り早く仕上げたいという思いです。意見の相違を埋める為、何度も何度も、時には朝方まで話をしました。
最終的には、より良い作品作りの為には、ブラック・インディ映画祭から離れて、作品規模を拡大し、多くの観衆に楽しみと喜びを与える映画として、もっとクオリティの高いものを目指すべきであるという結論に至りました。作品の為にも、地域活性化という目的の為にも、その方が良いという意見で再び一致したのです。 4 本格撮影 2011年4月にこのブラック・インディ映画祭から離脱し、山口監督と小野川の若者とで、新たな体制で映画づくりが再スタートしました。
小野川側の体制のメンバーは、予算ありきの商業映画製作ではなく、自らの力を結集して映画をつくりあげようと集まってきた地域の人々です。若い人達ががんばっているということで、小野川や周辺の人々の多くが応援隊となりました。若手主導のプロジェクトに、従来から小野川温泉を支えてきた先輩たちは、バックから惜しみないサポートをしているのです。 こうして、2012年に入っていよいよ本格撮影が開始できたのです。
今回の映画づくりでは人と人のつながりを大切にしており、たくさんの地元の方々のご協力を基に進んできました。この規模のSF映画は、通常なら億単位の予算となるそうで、とても実現できる規模ではないのですが、しかし、人々の協力は、どんどん奇蹟を起こしたのだそうです。
5 今後のビジョン
今後、たくさんの方に映画を観て頂くには、どのようしていくかという課題が残っています。この映画をどのように地域の活性化につなげ、大きく成長させてゆくか、小野川の若者達は模索をしています。2013年3月からモントリオールのファンタジア映画祭等、海外の映画祭に「ヲ乃ガワ」を出品する予定だそうです。もちろん目標は入賞して、世界の多くの人に観ていただくことです。小さな温泉町の若者達の目標は「世界」なのです。地元での先行試写会は、2013年4月6日(土)7日(日)の2日間予定されています。 これからの活動が、この企画当初の目的である小野川地域活性化の「実」となり大きく成長してゆくことになるのでしょう。小野川の若者達の熱き活動はまだまだ続きます。 「世界」を目指して! ☆SF映画「ヲ乃ガワ」先行試写会☆ 先行試写会についての詳しくはこちらをご覧ください。 〇掲載日 平成25年1月 印刷用PDFは、こちら |
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