祭りを支えるたち 〜美尚堂工房 南陽市の菊人形〜




人形の造型を担当している
菊地尚登さん
「全国一の歴史と技と文化を誇る――」をキャッチコピーに、2010(平成22)年に98回を迎えた南陽市の菊まつり。菊の衣装を身にまとった人形は様々な歴史絵巻を再現し、訪れた人たちを魅了しています。
 そんな菊まつりの舞台から人形、演出まで幅広く手がけているのが地元南陽市宮内に本社を構える有限会社美尚堂(びしょうどう)工房=菊地忠男(ただお)社長=です。南陽市の秋のにぎわいづくりに大きく貢献しています。
 菊まつりとの関わりは、昭和初期に忠男さんの父・熊吉(くまきち)さんがまつりの菊人形制作に加わったのが始まりで、東京から訪れていた職人にまじって造形技術を学んだそうです。その後、忠男さんも菊人形制作に加わり、1989(平成元)年に有限会社美尚堂工房を設立しました。

 現在は、忠男さんの長男・直哉(なおや)さん、次男・尚登(ひさと)さん、三男・匠(たくみ)さんの3人も美尚堂工房で作業を手伝い、仕事を切り盛りしています。その卓越した技術は親子3世代にわたります。

 10月に開幕するまつりに向けた作業は7月から始めるそうで、胴殻(どうがら)と呼ばれる、割竹(わりたけ)と藁(わら)で作る人形胴体部分の制作から行っていきます。8月を迎えると会場となる双松(そうしょう)公園で舞台を作り始め、開幕10日前になると人形を設置し、いよいよ菊つけ作業に取り掛かります。

毎年大勢の観光客らでにぎわう
南陽の菊まつり=2010年

 菊つけは、まつりに登場する菊人形に一株一株ていねいに菊を取り付けていく根気のいる作業。菊ごとに長さや大きさが異なるため手作業で調節し、鮮やかな菊の衣装に仕上げる姿に妥協はありません。

 「花の開花時期を調整するのは人形作りとは別の難しさがあるが、お客様に喜んでもらえれば何より。菊人形と一緒に会場一帯の自然を楽しんでほしい」と、来場者をもてなす苦労をいとわない直哉さん。細部にまでこだわる高いプロ意識が、大勢のファンの心をつかんで離さないのです。
 まつりは1ヶ月間にわたる長丁場のイベントなので、最低1度は菊の着せ替えが必要で、その作業は来場者を出迎えながらの作業となります。普段は見ることができない舞台裏の作業も見所の一つで、南陽の菊まつりに訪れた際にはぜひ注目してみてください。

 現在、同社が制作している人形は軽くて丈夫な強化プラスチック(FRP)製です。一昔前までは木彫で人形の顔や手足を作成し、それこそ一点ものの貴重な財産だったのです。残念ながら、同社は火災に遭ったため木彫の人形は全て焼けてしまいましたが、FRPで制作したものは今も大事に保管されています。
 忠男さんの作業場には、これまで南陽の菊まつりなどに出演してきた菊人形の頭部がずらりと並び、その数500体以上。どの顔も生き生きとした表情の役者ぞろいです。頭部や手足などの造形作業は、主に社長の忠男さんと次男の尚登さんの担当ですが、人間の顔となると今でも忠男さんが一人で行うそうで、そんなところにも強いこだわりを感じさせます。


忠男さんの作業場に
保管されている菊人形
 親子3代で南陽市の一大イベントを盛り上げている美尚堂工房では、菊人形のほかにも恐竜や動物、仏像、遊具など様々なものを制作しています。中には高さ20m以上の仏舎利もあり、手がける造形物は多岐にわたります。その確かな技術が評価され、北は北海道から南は沖縄県まで、全国各地から依頼があるそうです。
 同社倉庫には表舞台に出るのを今や遅しと待つ制作中の造形物があります。「原寸大の恐竜も手がけているんですけれど、有名すぎる恐竜じゃ面白くない」と、これまで同社が制作してきた恐竜はプラテオサウルスやプロトケラトプスなど、聞いたことがあるようなないような、マニアックな種類ばかり。「将来、恐竜展を開くことができるくらいになれば面白い」とのこと。今後の活躍に目が離せませんね。

 南陽の菊まつりを訪れた際、菊の美しさと一緒に人形の顔や舞台セットにも注目してみてください。きっとお気に入りの場面に出会えるはずです。




《祭りを支える人たち その2につづく》





 ○掲載日 平成23年1月

 ○執筆者 大竹茂美(置賜文化フォーラム事務局)

 ○取材協力 菊地直哉さん(有限会社美尚堂工房 南陽市)



印刷用PDFはこちら






(C) 置賜文化フォーラム All Rights Reserved.


















注目!
注目!



置賜文化フォーラム事務局



地域文化振興支援事業


(C) 置賜文化フォーラム All Rights Reserved. [login]

合計4,483,763件 (2010.07.15〜) 今日986件 昨日3,211件 記事1,926件